2013年，半年にも満たない弾丸日程で世界一周したことがある．飲み会のときによく聞かれる質問に対する回答，よく話している内容をまとめてみた．
行って良かった国は？
第一位：イースター島（チリ）
注目すべきは距離と目的．まず距離だが，南米チリのサンティアゴから約3,000kmに位置する絶海の孤島イースター島もといラパ・ヌイ．順調にいっても移動時間だけで2日くらいかかる．時間だけで考えると日本の真裏であるブラジルよりも遠いと言える．そしてイースター島の観光目的といえばモアイ像，基本的にはこの一点ではないだろうか．しかしモアイ像といっても少し珍しいだけの石である．石を見るためだけに日本から最も遠い場所へ行く．スタンプラリー的な旅ではなく，たった一つの目的のためだけに旅をする．これほどの贅沢はないと思いつつ，そもそも旅とはそういうものなのではないかと考えさせられた．
第二位：エルサレム（イスラエル）
旅の醍醐味の一つに異文化に触れることがあるだろう．無宗教の自分にとって三大一神教のすべての聖地が半径500m以内に密集するエルサレム旧市街は印象的だった．嘆きの壁の前で祈る黒スーツと黒ハットの正統派ジューイッシュ．聖墳墓教会の入り口にある，キリストが埋葬される前に横たわったという大理石の台に額を擦り付けてすすり泣くクリスチャン．メディアを通して伝わってくるテロや戦争のイメージとは全く違う，神聖な宗教の側面を肌で感じることができた．
危ないことありましたか？
直接的に命の危機を感じたことはなかったが，間接的にはある．2013年エジプトクーデターだ．ムルシー大統領が政権を剥奪されたクーデターで，死者数百名というニュース映像を見たのは確かお隣のヨルダンだったか．実はその2週間ほど前にエジプトに滞在していて，自分が泊まっていた宿の近くで暴徒化した人々の映像が流れていた．こればかりはどうしようもない．外務省の安全情報とSNSで情報を仕入れ，宿でリアルタイムな現地事情を聞く．これを怠らなければ必要以上に恐れることはないが，日本で平和ボケしている自分には印象に残る出来事だった．
ちなみに詐欺は会いやすい．日本人で一人旅なのでカモになりやすいのだ．ニセ警官，コインバラマキ，ミサンガ詐欺などなど，今となっては良い社会勉強だったよ詐欺師のみなさん．
一人旅のすすめ
自分一人で解決しなければならないことが多く，自立した人間になるための経験がたくさん積める．また，孤独の大切さを再考できる．旅というのは基本的には誰かと行ったほうが楽しい．それはそうだ．しかし一人旅の寂しさを経験していると，誰かと旅に行った時に隣にいてくれる人の有難さを人一倍感じることができる．人生はプラスとマイナスの振れ幅が大きいほど満足度が高くなるという話を聞いたことがあるが本当にそうだと思う．孤独を知らなければ仲間や愛する人の有り難みもわからないだろう．
貧乏旅行のすすめ
限られた予算の中で自分が投資したいものが浮き彫りになるので，若いうちに経験しておくと良いことの一つだと思っている．ある日のロンドンでの朝，レ・ミゼラブルを鑑賞したいと思った僕は劇場のチケットカウンターに向かった．残っていたチケットは1万円以上の席のみ．僕は迷わず購入した．その代わりに宿は格安ドミトリーで飯はカップ麺．それでもレミゼを観たかった．この日に限らずロンドン滞在中は毎朝TKTSに通いミュージカルのチケットを探し，空いた時間でアートを鑑賞するという日々を送っていた．衣食住は最低限，エンタメやアートを最優先する．自分が何に時間とお金をかける人間なのかがよくわかった．
世界一周のすすめ
西から出国して東から帰国する，もしくはその逆回りを世界一周と呼んでいる．東京→パリ→ニューヨーク→東京を一週間で移動しても世界一周になるので，世界一周したから特段何がすごいということはない．しかし世界一周の経験は凝り固まった価値観を壊してくれるのでやはりおすすめではある．船に乗って自動的に一周してくれるものは別として（老後にやってみたいけれど），自分で行き先を決めて一周してみると地球のスケール感が掴めるし，危険地帯でなければ一人でどこへでも行けるという自信につながる．一周してきたからこそ日本の魅力にも気づける（世界一周経験者はなんだかんだ日本かハワイが一番と言う人が多い）．何よりもこんなに安価で簡単にできるものなんだと実感できることが大切で，今後何をするにしても「とりあえずやってみよう精神」が身につけられる．知人に年に一回世界一周している人がいるが，世界一周航空券などで安価に渡航出来てノマドもフリーランスも珍しくない時代になったのだから，みんなももっと気軽に世界一周しちゃえばいいと思う．
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